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影響力の武器

社会で騙されたり丸め込まれたりしないために、私たちはどう身を守れば良いのか? ずるい相手が仕掛けてくる“弱味を突く戦略"の神髄をユーモラスに描いた、世界でロングセラーを続ける社会心理学の名著。
ネット時代の密かな広告戦略や学校無差別テロの原因など、社会を動かす力の秘密も体系的に理解できる。

影響力の武器

  1. 人間もそれ以外の動物も固定的で自動的な行動パターンを持っており、それは状況内の関連情報の中のたった一つの特徴によって引き起こされる傾向がある。このたった一つの特徴(信号刺激)は状況内のそれ以外の情報を逐一慎重かつ完璧に分析することなしに一連の正しい行動を導き出せるため、大変貴重なものとなる場合が多い。
  2. 信号刺激に自動的に反応することによって、人は貴重な時間やエネルギー、精神能力を節約できる。だが利用できる情報のうち、たった一片だけに反応することによって、愚かで高くつく間違いを犯しやすくなる。とりわけ自動的で考えなしに反応しているときはそうなりやすい。
  3. 承諾の過程の多くは、自動的で簡便な反応を行おうとする人間の習性にのっとったものである。私たちの文化の中では、大多数の人が承諾を導く信号刺激を備えている。そして、これらの信号刺激を、自分の要求を通す武器として用いる人々がいる。

返報性

  1. 人間文化の中で最も広範囲に存在し、最も基本的な要素となっている規範の一つに返報性のルールがある。これは、他者から与えられたら自分も同じようなやり方で相手に返すように努めることを要求する。さらに行為の受け手が将来それに対してお返しをすることを義務付けるので、人は自分が何かを他者に与えてもそれが決して無駄にはならないと確信できる。このルールに将来への義務感が含まれることによって、社会にとって有益な様々な持続的人間関係や交流、交換が発達することになる。したがって、社会の全構成員は、このルールを忠実に守ること、守らないと重大な社会的不承認を被ることを子供の頃から叩き込まれる。
  2. 他社の要求に応じるか否かの決定は、頻繁に返報性のルールから影響を受ける。それは返報性のルールが次の三つの特徴を備えているためである。
  • 普通であれば要求に応じるか否かを決めるはずの諸要因を凌駕するほどの強い影響力を持っていること。
  • このルールは望みもしない厚意を最初に相手から受けた場合にも適用されるため、借りを作る相手を自分で選べない。
  • このルールは不公平な交換を助長する場合がある。恩義を受けっぱなしにしているという不快な感情を取り除こうとして、受けた恩よりも大きな頼みを聞いてしまうことが多い。
  1. 返報性のルールの応用で、最初に譲歩してそのお返しとして相手の譲歩を引き出す「拒否されたら譲歩」法がある。最初に極端に大きな要求を出し、次にそれよりも小さな要求に引き下げると要求の引き下げが譲歩に見えるため、小さな要求が通る傾向が強まる。それだけではなく、相手がその要求を実行し、将来の同じような要求にも同意する傾向が強まる。

コミットメントと一貫性

  1. 人には自分の言葉、信念、考え方、行為を一貫したものにしたいという欲求がある。これは次の三つの要素によってもたらされる。
  • 一貫性を保つことで、社会から高い評価を受ける。
  • 一貫性のある行為は一般的に日常生活にとって有益である。
  • 一貫性を志向することで思考の近道が得られる。
  1. 承諾を引き出す上で鍵となるのは、最初のコミットメントを確保することである。コミットメントをしてしまうと、そのコミットメントに合致した要求を受け入れやすくなる。このコミットメントが最も効果的に働くのは、行動を含み、広く知られ、努力を要し、自分がそうしたかった(強制されたのでは無い)と考えられるときである。
  2. 人は自分がしたコミットメントに、その正しさを示す新しい理由や正当化を付け加え、決定に固執するようになる。その結果、状況が変化した後もずっとコミットメントの効力が持続する。

社会的証明

  1. 社会的証明の原理によると、人がある状況で何を信じるべきか、どのように振舞うべきかを決めるときに重視するのが、他の人々がそこで何を信じているか、どのように行動しているかである。他人を模倣しようとする強い作用は、子供にも大人にも見られ、購買における意思決定、寄付行為、恐怖心の低減など、様々な行動領域で認められる。他の多くの人々が要請に応じたと告げることによって、ある人がその要請に応じるように促すことができる。
  2. 社会的証明は二つの条件下において最も強い影響力を持つ。
  • 不確かさ。人は自分の決定に確信を持てないとき、あるいは状況が曖昧なとき、他の人々の行動に注意を向け、それを正しいものとして受け入れようとする。
  • 類似性。人は自分と似た他者のリードに従う傾向がある。

好意

  1. 人は自分が好意を感じている知人に対してイエスという傾向がある。
  2. 好意に影響する要因には以下のようなものがある。
  • 身体的魅力。その利点は想像以上に大きい。
  • 類似性。私たちは自分と似た人に好意を感じ、そのような人の要求に対しては、あまり考えずにイエスという傾向が強い。
  • 称賛。あまり露骨だと反感を買うが、お世辞は一般に好意を高め、承諾を引き出しやすい。
  • 人や物事と接触を繰り返し、なじみを持つようになること。この関係は主に不快な環境ではなく快適な環境の中で接触が起こる場合に当てはまる。特にこの関係が強く生じるのは相互の協力によって成功がもたらされる場合である。
  • 連合。自分自身や自分が扱う製品と望ましいものを結びつけ、その望ましさを分かち合おうとすることが多い。人は好ましい事象と自分が結びついていること、好ましく無い事象と自分が切り離されていることを他者に印象付けようとする。

権威

  1. 権威者に対する服従は一種の短絡的な意思決定として、思考が伴わない形で生じてしまう。
  2. 権威者に対して反応する場合、その実体にではなく権威の単なるシンボルに反応してしまう傾向がある。この点に関して、効果のある三種類のシンボルは、肩書き、服装、自動車である。

希少性

  1. 希少性の原理によれば、人は機会を失いかけると、その機会をより価値あるものとみなす。「数量限定」や「最終期限」のような戦術で利用される。
  2. 希少性の原理が効果を上げる理由は二つある。
  • 手に入れにくいものはそれだけ貴重なものであることが多いので、入手できる可能性がその質を判定する手っ取り早い手がかりとなる。
  • ある品やサービスが手に入りにくくなるとき、私たちは自由の喪失に対して反応する。(心理的リアクタンス
  1. 行動を動機づけるものとして、心理的リアクタンスは生涯の大部分を通じて現れる。特に「魔の2歳児」と10代は顕著で、制限に対してとりわけ敏感である。
  2. 希少性の原理は情報の評価にも適用できる。ある情報へのアクセスが制限されると、人はそれを手に入れたくなり、それに賛同するようになる。驚くことに、この効果はその情報を受け取らない場合にも生じる。情報が受け取られた場合も、それが他では手に入らないとみなされた時には説得力が増す。
  3. 希少性の原理は以下の条件で最も適用される。
  • あるものが新たに希少なものとなった場合。
  • 他人と競い合っている場合。

まとめ

現代の生活は過去のいかなる時代とも異なっている。科学技術の驚くべき発展によって、情報が溢れ、選択の幅が拡大し、知識が爆発的な勢いで増加している。人はこのような変化と選択の洪水に対して、自分自身を順応させなくてはならなくなってきた。それまでと根本的に変わった点の一つが意思決定の方法である。どのような状況においても、私たちは思慮深く、十分に検討を加えた上で決定を下すことを望んではいるが、現代生活の形態が変化し、ペースが加速度的に速まってきたことで、賛否両論を注意深く分析するのに適した条件が整わない場合が多い。そのため、別の意思決定のやり方(普段信頼性の高い、単一の情報を基礎にして承諾するかどうかを決める、というやり方)に頼らざるを得ない。この承諾を引き出す信頼性の高い要因が「コミットメント」「返報の機会」「類似した他者の承諾行動」「好意あるいは友愛の感情」「権威からの命令」「希少性に関する情報」である。


影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか

影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか