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ビジョナリーカンパニー

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ビジネスマン、経営者の間で不朽の名著とされるビジョナリーカンパニー。
以下、まとめ。


1. 時代を超える生存の法則
時を告げるのではなく、時計をつくる
よくビジネスを始める場合は最初に素晴らしいアイディアを持っている必要があると、多くの人は思う。
素晴らしい製品のアイディア。素晴らしいビジネスモデル。しかし、ビジョナリー・カンパニーの多くは最初から素晴らしいアイディアに恵まれていたわけではない。
また、ビジョンを持ったカリスマ経営者が必要とは限らない。すばらしい製品以上に、素晴らしい経営者を輩出する。組織としての素晴らしさがあれば、カリスマ経営者はいらない。組織がしっかりしていれば、必ずしもカリスマ経営者が必要とは限らない。

利益を超えて
企業は利益をあげるために存在している。それはビジネスにおいては常識かもしれない。
しかし、ビジョナリー・カンパニーの多くは必ずしも利益の最大化を目的にしていない場合がある。
ビジョナリー・カンパニーの基本的価値観は外部環境などによって変化する事はない。市場が変わったとしても、変わることはない。

基本理念を維持し、進歩を促す
ビジョナリー・カンパニーは変わらない基本理念、永続的に変わらない基本的な方針を持っている。
3Mで言う「個人の自主性を尊重する」だったりノードストロームの「顧客へのサービスを何よりも大切にする」だったりボーイングの「航空技術の最先端に位置し、パイオニアになる」だったりする。
他の部分は変わっても構わない。しかし、基本理念だけは変えてはならない。

社運を賭けた大胆な目標
ビジョナリー・カンパニーと聞くと誰もが安定志向、安定成長を想像する。
しかし、対象企業の多くが大事な局面で会社の運命を背負うプロジェクトに挑戦している。

カルトのような文化
ビジョナリー・カンパニーが必ずしも社員にとって素晴らしい企業とは限らない。素晴らしい会社というのは事実だが、それ故の厳しさを併せ持っている。
先見性とは、やさしさではなく、自由奔放を許すことでもなかった。事実はまったく逆であった。
ビジョナリー・カンパニーは自分たちの性格、存在意識、達成すべきことをはっきりさせているので、自社の厳しい基準に合わない社員や合わせようとしない社員が働ける余地は少ない傾向がある。

大量のものを試して、うまくいったものを残す
ビジョナリー・カンパニーと言えば「1つの大きな成功が収益の源泉になっている」と思われがちだが、多くの対象企業が小さな失敗や事業に挑戦して大きな収穫を得ている。
失敗なしには成功はない。枝葉を大きく伸ばすこと、そこから生まれる新商品をヒット商品に押し上げること。
失敗は成功の元。失敗を捨ててしまってはダメ。

生え抜きの経営陣
ビジョナリー・カンパニーには、変革をもたらし、新しい考え方をとりいれるために経営者を社外から招く必要はまったくない。
有能と呼ばれる経営者に多額の給料を払ったところで、確実に成功できるとは限らない。むしろ、カルチャーの違う人間を招くことでのマイナスの方が大きい可能性がある。
ビジョナリー・カンパニーが大切にしているのは、実績よりも自社の文化をいかに継承してくれるかである。

決して満足しない
安心感は、ビジョナリー・カンパニーにとって目標ではない。
それどころか、ビジョナリーカンパニーは不安感を作り出し、それによって外部の世界に強いられる前に変化し、改善するように促す協力な仕組みを設けている。
自社で抱える、最高の人材、最高のマーケティング組織。それらを戦わせる事で、他社よりも先に優位に立つ。
ビジョナリー・カンパニーの統計では売り上げに対する設備投資の額が一貫して高い。

始まりの終わり
1. 全体像を描く。
2. 小さなことに拘る。
3. 下手な鉄砲ではなく、集中砲火を浴びせる。
4. 流行に逆らっても、自分自身の流れに従う。
5. 矛盾をなくす。
6. 一般的な原則を維持しながら、新しい方法を編み出す。
ビジョナリー・カンパニーは基本理念を維持し、進歩を促すために、ひとつの制度、ひとつの戦略、一つの戦術、ひとつの仕組み、ひとつの文化規範、ひとつの象徴的な動き、CEOの1回の発言に頼ったりはしない。
重要なのは、これらすべてを繰り返すことである。


2. 飛躍の法則
第五水準のリーダーシップ
・偉大な実績に飛躍した企業はすべて、決定的な転換の時期に第五水準の指導者に率いられていた。
・第五水準の指導者とは個人としての謙虚さと職業人としての意志の強さという矛盾した性格を併せ持っている人物である。
・第五水準の指導者は次の世代でさらに偉大な成功を収められるように後継者を選ぶ。
・第五水準の指導者は徹底して謙虚であり、控えめで飾らない。
・第五水準の指導者は熱狂的と言えるほど意欲が強く、すぐれた成果を持続させなければ決して満足しない。
・第五水準の指導者は職人のように勤勉に仕事をする。
・第五水準の指導者は成功を収めたときは窓の外を見て、自分以外に成功をもたらした要因を見つけ出す。結果が悪かったときは鏡を見て、自分に責任があると考える。

最初に人を選び、その後に目標を選ぶ
・偉大な企業への飛躍を導いた指導者は、まずはじめに適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、次にどこに向かうべきかを決めている。
・「誰を選ぶか」をまず決めて、その後に「何をすべきか」を決める。
・飛躍を導いた指導者は、人事の決定に厳格であって冷酷ではない。
・人事決定の実際的方法
 1. 疑問があれば採用せず、人材を探し続ける。
 2. 人を入れ替える必要があることが分かれば、行動する。
 3. 最高の人材は最高の機会の追求にあて、最大の問題の解決にはあてない。
・人材は最重要の資産ではない。適切な人材こそが最も重要な資産である。
・どういう人が「適切な人材」なのかは、専門知識、学歴、業務経験より、性格と基礎的能力によって決まる。

厳しい現実を直視する
・自分が置かれている現実の中で最も厳しい事実を直視する。
・偉大な企業に飛躍するためにまず行うべき点は、真実に耳を傾ける機会が十分にある企業文化を作り上げることである。
・真実に耳を傾ける社風を作る基本的な方法
 1. 答えではなく質問によって指導する。
 2. 対話と論争を行い、強制はしない。
 3. 解剖を行い、非難はしない。
 4. 入手した情報を無視できない情報に変える「赤旗」の仕組みを作る。
・どれほどの困難にぶつかっても最後には必ず勝つという確信を失ってはならない。

針鼠の概念
・以下の三つが重なる部分を深く理解し、単純明快な概念(針鼠の概念)を確立する。
 1. 情熱をもって取り組めるもの
 2. 自社が世界一になれる部分
 3. 経済的原動力になるもの
・自社が世界一になれる部分はどこか、そして世界一になれない部分はどこかを理解する。
・中核事業で世界一になれないのであれば、中核事業は針鼠の概念の基礎にはなりえない。
・経済的原動力になるのが何かを見つけ出すには、最大の影響を与える一つの分母を探し出す(X当たり利益)
・針鼠の概念の確立は反復の過程である。評議会が有益な手段になりうる。

規律の文化
・みずから規律を守り、規律ある行動をとり、針鼠の概念を熱狂的ともいえるほど重視する人たちが集まる企業文化を作り上げる。
・規律の文化には二面性がある。一方では一貫性のあるシステムを守る人たちが必要だ。しかし他方では、このシステムの枠組みの中で自由と責任を与える。
・規律の文化と規律をもたらす暴君とを混同してはならない。
・針鼠の概念を熱狂的ともいえるほど信奉し、針鼠の概念に入らないものであれば、どんな機会でも見送る意志を持つ。
・「やめるべきこと」のリストは「やるべきこと」のリストよりも重要である。

促進剤としての技術
・技術の流行に乗るのを避け、慎重に選んだ分野の技術の利用で先駆者になる。
・どの技術分野に関しても決定的な問いは、その技術が自社の針鼠の概念に直接に適合しているのかである。

弾み車と悪循環
・偉大な企業への飛躍は、外部からみれば劇的で革命的だと見えるが、内部からみれば生物の成長のような積み重ねの過程だと感じられる。
・偉大さを持続できる転換は、準備段階から突破段階に移行するパターンをつねにたどっている。


3. 衰退の五段階
【第一段階】成功から生まれる傲慢
・成功は当然だとする傲慢
成功を収めてきたのは「当然だ」と考え、会社が何かを行う(あるいは行わない)決定を下してもそれにはほとんど無関係に成功が続くと信じるようになる。
・主要な弾み車の無視
指導者が外部の驚異や冒険、機会に関心を奪われ、主要な弾み車を無視するようになり、当初に偉大な業績をあげるようになったときと同じ徹底した創造性を発揮して若返りをはかろうとはしない。
・何からなぜへの移行
成功を謳歌する見方をとるようになり、深い理解と見識が忘れられる。
・学習意欲の低下
指導者が好奇心と学習意欲を失う。
・運の役割の軽視
偶然と幸運に恵まれた可能性を認めるのではなく、成功はすべて組織と指導者が優れていたからだと考えるようになる。

【第二段階】規律なき拡大路線
・持続不可能な成長の追求と大きさと偉大さの混同
成功を収めるとさらなる成長を求める圧力が生まれ、期待の悪循環が始まる。
この結果、人々も企業文化もシステムも極限に追い込まれる。卓越した短期的業績を常に達成することができなくなり、組織にほころびがあらわれるようになる。
・関連しない分野への規律なき飛躍
以下の三つの基準のうち、少なくとも一つに当てはまらない分野に進出する。
第一に、情熱を持って取り組める分野、会社の基本的価値観に一致する分野なのか。
第二に、その活動かその分野で世界一になれるのか。
第三に、経済的原動力、経営資源の原動力を強化する活動なのか。
・主要なポストのうち適切な人材が配置されているものの比率の低下
主要なポストのうち、適切な人材が配置されているものの比率が低下するのは、適切な人材が流出しているか、卓越性を維持して成長するのに必要な人材を集められるよりも早いペースで成長した結果である。
・容易に利益を得られることによるコスト面の規律の緩み
コストが上昇したとき、規律を強めるのではなく、価格を引き上げ、売上高を増やそうとする。
・官僚制による規律の破壊
官僚的な規則の制度によって、規律の文化の特徴である自由と責任の精神が破壊される。自分の仕事を責任によってではなく、肩書きで考える見方が強まる。
・問題のある権力継承
後継計画が貧弱か、社内で優れた指導者を育成するのに失敗したか、社内政治の混乱があったか、運が悪かったか、後継者の選択を間違ったために、権力の継承で困難にぶつかる。
・組織の利害より個人の利害を優先
権力の座にある人が数十年先を見通して偉大な企業を築くことを主な目的として投資するのではなく、短期的に報酬や特権や名声や成功の分け前をもっと得られるようにするために、自分自身と支持者への分配を増やしていく。

【第三段階】リスクと問題の否認
・良いデータを強調し、悪いデータを小さく見せる傾向
悪いデータを小さく見せるか説明し、会社の何かがおかしくなっているとは想定しようとしない。経営者は外部の賞賛や報道を強調し、大げさにいいたてる。
・事実の裏付けがない大きな賭けと大胆な目標
指導者が大胆な目標を掲げ、大きな賭けに出るが、事実の積み重ねに基づくのではなく、ときには悪いデータが積み上がってきたのを無視してそうする。
・曖昧なデータに基づいてとてつもないリスクをおかす動き
データが曖昧な状態で、最悪の場合には深刻か致命的な打撃を受けかねない決定を行うとき、指導者はデータを良い方向に解釈し「喫水線以下」に大穴を開けるリスクをおかしている。
・経営陣の健全な行動様式の衰退
対話と論争が質と量の両面で目立って低調になる。経営が合意型か独裁型になり、激しい論争を経た決定を全員で実行していくスタイルではなくなる。
・外部要因への責任の押しつけ
指導者が後退や失敗の責任を完全に引き受けるのではなく、外部要因や他人に責任を押し付ける。
・組織再編への固執
厳しい現実に真っ正面から対応するのではなく、組織再編を繰り返す。幹部は外的な条件ではなく、社内政治に注意を集中するようになる。
・傲慢で超然とした姿勢
権力を握るものが傲慢になり、超然とした姿勢をとるようになる。経営幹部の地位を示すものや特権によって、超然とした姿勢が強まる。さらに新しい本社ビルに入れば経営幹部は日常業務から切り離されうる。

【第四段階】一発逆転策の追求
・特効薬の追求
「ゲームを変える」買収、新戦略への一貫性のない飛躍、興奮を呼ぶ技術革新など、劇的で大きな動きによって素早く突破口を開こうとする傾向がある。失敗するたびにこれを繰り返し、一つの計画から別の計画へ、一つの目標から別の目標へ、一つの戦略から別の戦略へ揺れ動き、一貫性のない行動をいつまでも続ける。
・救世主のような指導者への期待
取締役会は驚異と後退への対策として、カリスマ的な指導者や社外の救世主を探す。
・パニックと拙速
冷静に慎重に規律ある行動をとるのではなく、あわてて条件反射的な行動をとり、パニックに近くなる。
・抜本的な変化と「革命」の喧伝
新しい計画、新しい文化、新しい戦略という新しい体制を象徴する言葉として、「革命」や「抜本的」変化といった言葉が使われる。指導者は大宣伝を行い、従業員の力の結集と動機付けのために力を注ぎ、流行り言葉やキャッチフレーズを浸透させようと努力する。
・業績より売り込みの優先
期待を低くするために業績回復が難しく、時間がかかると強調するのではなく、ビジョンを売り込む。業績の低迷を補うために、明るい未来を約束して売り込み、過大な約束をして期待を裏切るパターンに陥る。
・当初の業績回復とその後の失望
当初は業績が急回復するが、長くは続かない。希望がついえた後に次の希望もついえる。成果を積み重ねて勢いが蓄積していく状況にはならない。
・混乱と皮肉な見方
組織の存在理由が何なのかを、従業員が簡単に語ることができなくなる。基本的価値観は破壊され、無関係になる。会社は「どこにでもある並の職場」にすぎなくなり、給料のために働く場にすぎなくなる。従業員は勝利を収め、圧倒的な地位を築く能力が自分たちにあるとは思えなくなる。会社の基本的価値観と目標を強く信じるのではなく、不信感を持つようになり、ビジョンや価値観は宣伝文句にすぎないとみるようになる。
・リストラの繰り返しと財務力の低下
計画に失敗するたびに資源が流出する。キャッシュフローと財務の流動性が低下し始める。何度もリストラを繰り返すようになる。選択肢が狭まっていき、戦略的な意思決定は状況によって強いられたものになっていく。

【第五段階】屈服と凡庸な企業への転落か消滅
組織は第五段階に急速に向かうとき悪循環に陥って抑えがきかなくなっていく。
一発逆転にすがり、失望し、次の策にすがるというサイクルを繰り返すごとに経営資源が失われていく。
現金に余裕がなくなる。希望は薄れていく。選択肢は狭まる。

充分に根拠のある希望
第一〜第三段階に衰退の事実を理解すれば反転は可能だ。
いくつかの場合には第四段階に入っていても一発逆転策にすがるサイクルから抜け出して一歩ずつ再建を進められる資源が残っていれば進路を逆転させることができる。
真に偉大な組織がそこそこ成功を収めているにすぎない組織と違う点は、困難にぶつからないことではない。
一時は後退しても、壊滅的な破局にぶつかったときですから、回復して以前より強くなる能力を持っていることである。
完全に打ちのめされて退場するのでない限り、常に希望が有る。


ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則

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ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則

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ビジョナリーカンパニー3 衰退の5段階

ビジョナリーカンパニー3 衰退の5段階